コンビニに行きたい。
肉まん食べたい。
でも外は寒い。
ストーブの前から動きたくない。
「愛永さん」
「んー?」
「こ、コンビニ、行こう?」
でもやっぱり肉まんが食べたくて、俺は同じようにストーブの前で暖まる愛永さんにオネダリをする。
この間買ってもらったお揃いのコートも着たい。
何だか最近、幸せ過ぎてワガママになってきたなぁ。
「肉まん?」
「うん。食べたい、です。」
「丁度良かった。俺も食べたーい。」
ニコニコと笑いながら、愛永さんがそう言った。
お揃いのコートも着ようね、なんて言うから、以心伝心ってやつだろうかと期待してしまう。
二人でワードローブを漁って、朝から着たままのパジャマから着替える。
俺の好きなタイプで俺に似合う、俺だけの服。
愛永さんがコーディネートして選んでくれたやつばかりだけど、俺の事を考えて選んでくれたんだって分かるから全部好きだ。
ビックリする値段のやつもあるけど、全部じゃない。
「コート出して、コート!」
愛永さんがワクワクしながら言うから、俺もさっきよりもワクワクしてしまう。
外はチラチラと雪が降り出しているから、ついでに手袋とニット帽も出そう。
歩いて十分程のコンビニに行くにはすごく重装備だけれど、外は本当に寒そうだから仕方ない。
「「行ってきます」」
全部着込んで戸締りと火の用心。
鍵と財布を持って、家を出る。
外は思った以上に寒くて、もうどうせならばスーパーに行って買い溜めしようかと話しながら手を繋いで歩く。
昨日の情報とは言え、天気予報では三日程雪が降るし積もるかもしれないと言っていた。
積もってしまったらますますスーパーに行きたくなくなるから、今の内に終わらせてしまいたい。
「三日くらい降るんだよね。積もれば雪だるま作れるかな?」
「そこまで、ふ、降らないかも。」
キラキラした瞳で言う愛永さんには申し訳ないけれど、多分雪うさぎが作れたら良い方な位しか積もらないと思う。
元々この辺りは、積もる方でもないし。
でももしもその位雪が積もったら、雪だるま作って遊ぶのも楽しそうだ。
オーナーとピーチさんと一緒に四人で。
「ちぃちゃんは雪好き?」
「んー………どう、だろう?愛永さんは?」
「俺?俺は嫌いかな。」
好きだとか嫌いだとか判断できるほど、雪と戯れた記憶が無いから分からない。
だから愛永さんに質問を返してみたら、意外な返事が返ってきた。
さっきまで雪にはしゃいでた風に見えたのに………
「俺のお母さんが死んじゃった時に、雪に埋もれてて死体の発見が遅れちゃったんだって。
溶けたから分かったらしいけど………溶けなければ良かったのにね。」
「雪は溶けちゃうから、嫌いなんですか?」
なんとなく、そう思った。
愛永さんのお母さんは自殺だと聞いている。
そのお母さんがどうして自殺を選んだのかは分からないけれど、
愛永さんは雪がお母さんをずっと覆い隠して守ってくれればと思ったのだろうと、本当になんとなくそう思った。
「うん。溶けてなくなって、白日のもとに晒しちゃうから嫌い。」
ギュッと、愛永さんが俺を握る手に力を込めた。
お互い手袋越しだから体温なんて分け合えないけれども、それでもきっと冷たくなっているだろう手に熱を分けたくて俺も同じように力を込めた。
「例えば、お、俺が自殺したとして」
「嫌な例え」
「うん、そうですね。で、例えそうだとして、雪が何もかも、かく、してくれたとしても、俺は溶けて欲しいって願うと思う。」
俺は愛永さんのお母さんではないから、愛永さんのお母さんがどんな気持ちだったか分からない。
今から言う言葉は安い慰め以下だろう。
それでも俺はワガママだから、伝えたいと思った。
「好きな人に、触れて欲しいから。」
ずっとずっと雪に隠されてて、きっとそれで幸せだろうけれど、でもやっぱり思うのだ。
オーナーやピーチさんや東さんに、触れて欲しい。
愛永さんに、抱きしめて欲しい。
例えもう俺が物言わぬ肉塊になってしまっているとしても、やはり最期の最期まで思うんだ。
愛している人に、触れて欲しいと。
「分かんないけど、多分、そう思う。」
「………そっか。」
何が言いたいのか分かんなくなったから、愛永さんには何一つ伝わってないかもしれない。
けれど愛永さんの中で、何か納得出来るモノがあったらしい。
さっきよりもずっとずっと穏やかな笑顔で、愛永さんは笑った。
「でもね、ちぃちゃん。」
「はい。」
「俺を置いて行かないでね。」
いつもの台詞。
思えばこの台詞に、愛永さんはどんな意味を込めているのだろうか。
どんな想いを、込めているのだろうか。
「愛永さんも、俺を置いて行かないでね。」
同じだけの想いを、込めれているだろうか。
同じ意味を、込めれているだろうか。
でもそれはきっと聞いてしまっては何の意味もなくなってしまうから聞かない。
でもいつかきっと、答え合わせをする時が来るだろう。
その時まで、手を繋いで生きていく。
閉じる/拍手