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ゆかりちゃんは可愛い。
男の子なのに女の子みたいな格好してるけど、私がするよりも似合ってて可愛い。
一度だけ、どうしてそんな格好してるの?って聞いたら、世界で一番似合うからって言われた。
そりゃそうだ。ゆかりちゃんはそこら辺のモデルさんや女優さんより、ずっとずっと可愛い。

「ゆかりちゃん、ゆかりちゃんは可愛いね。」
「うん、知ってる。俺は世界で一番可愛いよ。」

でもありがとーって、私と並んで歩くゆかりちゃんは笑う。
夕日がゆかりちゃんの笑顔に反射して、キラキラきれいだった。
秋も深まる夕暮れ。周りの木々は紅く染まって、空も紅くて。
まるでゆかりちゃんを一枚の絵画にしている。

「ゆかりちゃんは可愛いだけじゃなくて、きれいもなんだね。」

女神様みたいで、すごくきれいだ。
そう言えば、ゆかりちゃんは珍しく困った顔をした。
いつもだったら、さっきみたいにありがとうって喜んでくれるのに。
私なにか、間違えたかな?

「違うよ。きれいはね、俺のじゃないの。」

俺のじゃない?つまり、ゆかりちゃんよりもきれいな人が居るということだ。
信じられない。
信じたくない。
でも、興味はある。
ゆかりちゃんよりもきれいな人。
ゆかりちゃんが認めるほど、きれいな人。
それはどんな人なのだろうか。

「そうなんだね。じゃあ、もう言わない。」

でもなんとなく、怖くて聞けなかった。
聞いちゃったら、もうゆかりちゃんに会えなくなるような気がして。
だから私は話題を変えた。
どこどこのスイーツが美味しいよねとか、そう言えばこの間SNSでこんな話題を見てねとか、そんなつまらない事。
でもゆかりちゃんはそんなつまらない事も楽しそうに相槌をうってくれるし、ゆかりちゃんが美味しかったスイーツとかも教えてくれる。
やっぱりゆかりちゃんはとっても優しい。

「ゆかりちゃんはいっぱい知ってるのね。」
「しずくちゃんもいっぱい知ってるね。今度一緒にアイス食べに行こうか。」

そう言ってゆかりちゃんは私の手を握ってくれる。
恋人じゃないのに、恋人みたいな繋ぎ方。
ゆかりちゃんがすると全然変だと思わない。
むしろ少し、ドキドキしちゃう。
ゆかりちゃんが男の人だからかな?
チラッとゆかりちゃんを見上げてみれば、嬉しそうに笑うゆかりちゃんと目が合う。可愛い。

「なあに、しずくちゃん。」
「ううん。なあんにも。」

何だかちょっと面白くなって、二人でくすくすと笑い合う。
繋いだ手は力を込めて、ぶんぶんと振り合って。
なんだか本当に恋人になったみたいで面白い。
テンションあがったゆかりちゃんがまたキスをしてくれたから、うれしい。
可愛い人からのキスは、うれしいものだ。

「あ。」

ふと、声が漏れてしまう。
目の前には大きな橋。すっかり通い慣れた筈なのに、足が震えてそれ以上は行けない。
―――行かなきゃ、いけないのに。

「渡れない?」

ゆかりちゃんが手を握ったまま、私にそう聞く。
渡れない筈がないのに、何故だかこわくてしかたない。
すがるように握る手に力をこめれば、まるでママが寝かしつける時みたいに、おでこにキスをしてくれた。

「渡れないなら、しかたないね。もう少し歩こう。」

ゆかりちゃんはそういうと、私の手を引いて戻ってくれた。
やっぱりゆかりちゃんは、世界で一番優しいね。



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