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レンタル屋は近くにあるとはいえ車で十分くらいなので、ついでだと言い張って康介を迎えに行く。
康介はちょっと呆れたような表情を浮かべたものの、じゃあお願いしようかなと了承したからまあ良しとしよう。

『駐車場着いたぞ』
『はーい』

了解の返信が来るとほぼ同時に、部屋から出てくる康介が見えた。
格好はいつもとそう変わらないけれど、とはいえこんなにも早く出てきたということは玄関前に待機していたとかだろうか。
は?
やべっ、可愛い。
めっちゃ楽しみにしてくれてるじゃん。

「おはよう、耀司くん!」
「はよ。康介、寝癖つけてるぞ。」
「うそ!?」
「嘘。」

そのまま助手席に滑り込むように乗った康介が可愛くて、衝動のまま康介のまろい後頭部に手を回してキスをする。
朝だから人通りも少ないし、これくらいは大丈夫だろう。
そんな言い訳をしながら唇を離せば、
康介がほんの少し不満げに頬を膨らませながらも俺の頬に一瞬だけキスをしたので、どうやら許されたらしい。
ちょろいな、可愛い。

「早く行こう!」
「おう。シートベルトしてろよ。」

最近はスキンシップを多く取る俺に合わせてか、康介の方からスキンシップをしてくれることが多くなった。
それが嬉しくてたまらないし、けれども不安な要素でもある。
もしも俺がお試し期間で終了してしまったとして、次の男達がこんなにも可愛い康介を独占することができるのだろうか。
別に自信がない訳じゃねぇ。
だが、正直俺が康介の好みのタイプの人間かどうかすら分からない以上、俺が無様に振られる可能性は高い方だ。
自惚れるのは、まだ早い。

「耀司くん、朝ご飯食べた?」
「いや、まだ。康介は?」
「僕は食べたんだけど………もし良かったらさ、はい。」

車を出す直前、そう言って差し出されたのは三角と俵ともちょっと違う不格好なおにぎり。
誰かの手作りだろうと思わしきそれは、もしかして―――

「僕が握ったやつだけど、おにぎりなら信号待ちの間でも簡単に食べれるかなって思って………
あ、他人が握ったやつダメだったりする?ごめっ………」
「いや!食う!食わせて!」

そのままカバンの中にしまい込まれそうになったおにぎりを慌てて奪い取る。
惚れた奴の手料理とか、食いたいに決まってる。
ましてや俺のこと考えて作ってくれたやつだぞ?
嬉しくねぇ訳がないだろ。

「………一応僕も食べたけど、耀司くんの味覚に合わなかったら返してね。」
「おう。」
「こんなの渡してなんだけど、運転しながらはダメだよ?」

今日ほど距離があって良かったと思った日はない。
信号待ちは何回もあるし、食えるチャンスは何回もある。
ドリンクホルダーに落ちないように乗せて、今度こそ車を発進させた。

ちゃんと言いつけ通り信号待ちの間に食べたおにぎりは、不格好なわりには米の固さも味付けも丁度良いどころか俺好みだった。



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