………なぁんて。
色っぽいことを言ってみたが、実際エロいことなんざ何一つしてねぇ。
ただただ必死にエロい気分になるのを我慢しながら、康介の望むままにベッドの上でキスを繰り返してただけだ。
拷問かな?
いや、一瞬イケそうだなって雰囲気はあったんだよ。
シーツの上でとろっとろになった康介が息を荒げながら俺の頬を撫でた瞬間とか、あ、これいけるんじゃね?って思うだろ?
誰だってそうだ。
「………ようじ、くん………」
「ん?どうした?」
甘い声で俺の名前を呼んで、俺に抱き着いてくるんだぞ。
絶対イケるだろ。
お試し期間中ではあるけど、康介から誘われたならノーカンじゃね?って揺らぐだろ。
「えーが、みたい。」
「………おう。」
現実はこれだよ。
俺の首筋に顔を寄せて、満足気にピスピスと鼻を鳴らしながらも本来の目的を思い出してしまった康介をゆっくりと抱き起こしてやる。
嬉しそうに笑う康介が可愛いんだが、クッソ腹が立つ。
とはいえ無理矢理手を出せる程の関係じゃねぇから、そこはもう耐える。
「そういやまだ何観るか決めてなかったな。どれ観たいんだ?」
「耀司くんがDVD屋さんで言ってたやつ。」
即答で言われたのは、さっきのレンタル屋で俺が言い出したことだった。
そりゃあ確かに、今日観れたらいいなとは思っていたが………
「全部観たい。ダメ?」
「いや、別に良いけど全部観るって、時間大丈夫か?」
話数が少ないとはいえ、一本一本は長いし全部見ようと思えば結構な時間になる………
というか、元々今日中には観れないだろうなと思ってた位には長いと思う。
もしかして泊まってくれる、とかか?
「ん。終電ギリギリまで居て良い?」
「電車乗らないのにか?」
別に俺的にはいつまで居ても構わないし、なんらずっとこの家に居れば良いとすら思っているけれど………
康介的には、そうじゃねぇっていうのも分かってる。
拘りなのか、それとも警戒心からなのか。
どちらにせよ終電というワードが、途方もない高さの壁のように感じてしまう。
「電車乗らないけど、終電と同じ位の時間に帰る。」
キッパリと言われた言葉に、無理に希望を見出すならば【電車に乗らない】とはっきり告げたことだろう。
つまり、俺の車には乗ってくれるということだ。
狭い車内で二人きりになることを許可し続けてくれたことだけは良しとしよう。
「お泊まりは、また今度。」
暗い方へと沈みかけていた思考が、一気に浮上する。
は?え?
今コイツなんて言った?
俺的にめちゃくちゃ都合が良いことを言わなかったか?
「ほら、早く観よう!時間無くなっちゃう!」
ベッドから転がるように落ちて、康介はいつも映画を観ているリビングへと走っていった。
そういえば今日初めて寝室に連れ込んだなと思うよりも先に、俺の脳みそはさっき康介に言われた言葉をゆっくりと噛み砕いてしまう。
【また今度】………【また今度】って言ったよな?
また今度ってことは、いつか泊まりに来てくれるってことで良いんだよな?
泊まるの自体は嫌じゃねぇって認識で良いんだよな?
「耀司くん!観ようよ!!」
「待て!今行く!」
痺れを切らした康介が責めるように俺を呼ぶ。
慌てて返事をしたものの、正直立ち上がろうにも衝撃が強過ぎた。
ガキじゃねぇんだからとも思うが、でも期待すんなっていう方が無理な話だろ。
手で覆った顔が赤くなっているのが、自分でも分かる。
「まだー?ベッド準備したのにー………」
「行く!行くからマジで待ってろ!」
寂しそうな康介の声に今直ぐ駆け寄ってやりたい。
本気で駆け寄ってやりてぇって思ってんだが、本気で待って欲しい。
男として健全な所が元気になってしまったので、一回トイレに行く時間をくれ。
わりとマジで、切実に。
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