「お鍋の味付け拘りある?辛いの嫌いだから辛いのにはしないけど、それ以外である?」
「ん?」
初めて入った康介の部屋。
思えばここまで惚れてる相手の家に招かれたのなんて初めてで、馬鹿みたいに緊張してしまう。
若干の居心地の悪さとか気恥しさを感じながらクソ狭い部屋の中を見渡していると、律儀にエプロンを着けた康介からそう聞かれた。
………俺が辛いの苦手なの、覚えてたのか。
「辛くなきゃ平気。荷物、適当に詰めていいんだろ?」
辛いの得意じゃないことは、俺自身が覚えないくらいに何気ない会話の中で言った情報だ。
それなのに当たり前のように言ってもらえるのは………正直嬉しい以外の何物でもない。
「うん。僕も適当に作ってるから、耀司くんチョイスでよろしく。」
………俺チョイスで荷物詰めたら、マジで生活必需品全部詰めて俺ん家行くことになるけど大丈夫か?
まぁ、そこの手前でやめては置くけど………
そう思いながらおあつらえ向きに置きっぱにされてたキャリーケースに適当に服を詰める。
コイツ、服のバリエーション少ねぇな………。
俺好みに着飾りてぇけど、多分嫌がるな。
「ん?」
それはふとした違和感。
なんてことはないタコ足配線なんだが、問題はそこに着けられたもう一つの分岐するタイプのコンセント。
タコ足にタコ足付けるなんて危険なのは有名な話だが、珍しくもなんともない。
じゃあなんで違和感を覚えたかというと、康介の部屋の物の少なさだ。
必要最低限しかない。
電子機器なんてタブレットとスマホ、あとは別のコンセントに接続された冷蔵庫位で、正直元々付けてあるタコ足だけ事足りる位だ。
それなのに何故わざわざコンセントを付ける必要がある?
実際、このコンセントには何も接続されてない。
「康介………」
「んー?」
「タコ足にタコ足を重ねてんじゃねぇよ。危ねぇぞ。」
親切心を装って、取り敢えず何も接続されてない方のコンセントを引っこ抜く。
嫌な予感が止まらない。
そういえばこの家の鍵、簡単に複製できそうだよな。
「………え?僕、別にそこまでコンセント使わないけど………んん?」
キョトンと首を傾げた康介に、嫌な予感がますます心臓に広がる。
使ってないことなんて、見りゃ分かる。
ただ問題はなんでそんなコンセントがタコ足に接続されているのかということだ。
一見すれば至って普通な、百均にも売ってそうなコンセント。
だが俺には、一種の爆弾にしか見えなかった。
ここ数年、ずっとニュースで話題になってるよな。
このタイプの―――
ピンポーン
本当にタイミング良く、ドアチャイムの音が鳴り響く。
俺は無警戒にもドアに向かおうとする康介を無言で制止しながら念の為包丁を片付け、
再びチャイムの音を響かせ始めたドアをゆっくりと開いた。
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