「俺は………」
勿体ぶったこの言い方の後は、なんてことはない。
単純に康介と康介の元彼との修羅場を目撃してから、どうにも康介のことを忘れられなく気が付けば惚れたってだけの話。
しかも、これで分かった。
「お前、別に康介に惚れてねぇじゃん。」
「「え?」」
「違う!」
俺の言葉に康介と課長が驚愕の声を上げ、秋元が唸るように否定の声を荒らげた。
何一つ違わねぇだろ。
「お前が欲しかったのは、康介の献身だろ?あんな風に分かりやすく、強く愛されたい、求められたい。それだけ。その先に居るのは誰でも良かったんだろ?」
康介は人見知りもそうだが、オンオフが激しいから仕事中の愛想はクソだ。
だがこれがプライベートになると一変することは、俺はもう嫌という程に理解している。
だからこそ、オフの康介に可愛がられるとまるで自分だけが愛されているように錯覚してしまう。
ただ甘やかしの天才ってだけなのにな。
その片鱗を見たら、そりゃあ執着するだろうよ。
「お前や俺に群がる、常に媚びてる女達とも違うからな。本当の意味で素直で可愛いよな。でも、そんな奴探せばわりと居るぞ。」
「居ない!居るハズない!康介の代わりなんてどこにも………」
「【お前の理想の康介】なんざ幾らでも居るに決まってるだろ!」
康介の代わりなんてどこにも居ないという意見はごもっともだ。
でも、コイツは違う。
コイツが抱くのはただの理想、幻想だ。
【自分の思い描く】康介だったらこうするかもしれない、ああするかもしれない。
【自分の思い描く】康介だったら、こんなことはしない。
そればかり。
「何一つ康介のこと見てねぇクセに、偉そうなことほざいてんじゃねぇぞ。」
「お前に何が分かる!」
秋元の吼え声に、分かるとも分からないとも言えなかった。
どっちの答えを言ったとしても、嘘になってしまうからだ。
秋元の気持ちが、分からないのは分からない。
康介の傍に居て、康介を手に入れている以上は。
けれど、自分の視線の先に居るのは【康介】じゃなくても良いのは、俺も一緒だった。
秋元の視線の先に、居たのが【たまたま】康介だった。
俺の切欠なんてそんなもんだ。
でも、自信を持って言える。
確かに俺は康介じゃない奴が視線の先に居たとしてもちょっかいをかけてたとは思う。
それでも、ここまで惚れたのは康介だけだ。
他の奴なら、多分俺は当初の目的通りに終わらせてただろうと。
「なんでお前なんだ!何で!俺の方が、俺の方が康介に相応しいのに!」
「だからそれ。何を以て相応しいっていうんだよ。」
康介の相応しい男にはなりてぇとは思う。
そうは思うが、だからってそうじゃない奴が恋人になっちゃいけねぇなんてことはないだろ。
余程最低な男じゃない限り。
てか普通に考えてストーカーしてるお前の方が相応しくねぇだろ。
「俺の方が愛してるのに!!」
獣が吼えるように、秋元が髪を掻きむしり蹲りながら叫ぶ。
子供のワガママにしては歪なそれは、あまりにも切なく、悲しいものだった。
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