あれから二人であーだこーだとルールを作ったり、
いつも通りに仕事をしていたりとしたら休日………
つまり土曜日なんざあっという間に来た。
今日はとっとと盗聴器やらを取り外してお帰り頂いて、
荷物を詰めて俺ん家に運び込もうという狙いだったんだが………
「秋元、君ね………」
「仕掛け過ぎだろ!?バカか!?」
秋元に触らせたら無効化出来てるのかが分からないという俺の主張により、
外したり無効化したりするのは俺で、
秋元は場所だけ俺に教えながら持参させたパソコンとスマホ等の記憶媒体やクラウドから盗聴盗撮データを、
課長と康介監督のもとというフォーメーションになったんだが………仕掛けた数が多過ぎる!
盗聴器そのものは俺が見付けた一個で終わりらしいんだが、問題は監視カメラだ。
クソ狭いワンルームだぞ?
それなのに開始三十分でもう十個は外して無効化までしたんだが、まだ仕掛けてるとか馬鹿じゃねぇのか!?
「一ミリの隙きも無く収めたいと思って何が悪い。」
「悪いからこういう事になってんだろうが!ほら、次!」
悪びれもなくケロッと言うもんだから腹が立つ!
どんどん荷造りする時間無くなるじゃねぇか。
………てかコイツもしかして!
「お前、もしかしてトイレや風呂に仕掛けてないだろうな!?」
「する訳が無いだろう。お前は馬鹿か?変態か?」
なんで!
なんで俺が変態みたいな言い方されなきゃいけぇねぇんだよ!
そろそろ持ってるドライバーでぶん殴ってやろうかと振り上げた瞬間………
「そもそもトイレと風呂一緒なんだから、どっちかに仕掛けたらどっちも見れるしな。」
な ん で 知 っ て ん だ よ !
当たり前のように言った言葉に、流石に課長はドン引きするし康介は画面が見えるギリギリまで距離を取った。
秋元だけがそんな反応に対して不思議そうな顔をしているが、当たり前だろうがバーカ!!!
「………取り敢えず、はよ次の隠しカメラの場所言え。」
俺も振り上げたドライバーを結果的に腕をゆっくり下ろすだけに止め、先を促しておく。
もうほんと、早く帰りたい。
結局そこから一時間かけて、もう十個程の隠しカメラを外した。
俺も康介も泣きたくなったし、課長はよくこんな狭い部屋にここまで仕掛けられたなと一周回って感心していた。
「これで最後なんだよね?」
「はい、これ以上仕掛けられなかったので。」
………とんでもねぇ理由だなぁ、おい。
ちなみにトイレと風呂に仕掛けなかったのは、常識的に考えてだそうだ。
なんだ?
アイドルはトイレなんかしない理論か?
つか常識的に考えられる人間はそもそもカメラや盗聴器仕込まねぇよ、バーカ。
「じゃあこれは俺達の方で処理するから、それに掛かる費用と退去費お前出せよ。」
「処理費は分かるが退去費とはどういうことだ?」
きょとんと首を傾げる秋元に、コイツほんとこの辺りの常識無さ過ぎだろうとゾッとする。
普通に考えて、和解したからと言えどストーカーが何度も不法侵入した家に一人で住み続ける筈ないだろ。
「今回の騒動が原因で康介引っ越しするんだよ。お前のせいなんだから、せめて無駄に掛かることになった退去費用は払えよ。」
どこにとか、本当はとか、そういった理由は当然伏せておく。
秋元は聞きたそうにしていたが、言う訳ねぇだろ。
この間の話し合いの時に、康介は俺さえ良ければ一緒に暮らしてみたいと前から思ってたと言ってくれた。
ただそれはあくまでこの家の更新時期に、だ。
わざわざ退去費用を出してまで早めたい訳じゃなかった。
「………分かった。」
「現金一括な。康介に一円たりとも払わせるな。」
俺の提案に康介は少し遠慮がちな表情を見せたが、
そこはあらかじめ慰謝料代わりに俺と課長でそういう風に話をもっていくからということで話をつけていたから、大人しく黙っている。
大体、コイツだって俺と同じ位の給料とボーナス貰ってんだから、払えるだけの貯金位あるだろ。
「勿論だ。」
「一円でも多く出すなよ。来週見積もり出してもらうから、きっかりその金額だけ払え。それが今回の慰謝料だ。」
警察沙汰にしないだけ、ありがたく思え。
神妙な顔して頷いてたが、本気で分かってんのか?
俺も………あくまで立会人だからと口を挟まないでいてくれる課長も不安に思いながらも、今後の予定を決めることにする。
今後の予定もクソも、何日の何時にコイツに金払わせるかっていう話なんだけどな。
→/拍手