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「何から観る?どれから観る?」
「そうだな………」

キラキラとした顔で再生機の前に座り込む康介に促されるまま、買い込んだDVDなどが乱雑に入れられた袋を漁る。
あれもこれもと買い込んだものは、あのアニメも含めて観たいものばかりだから今更目移りしてしまう。
一個一個袋から出しながら床に並べていけば、ジャンルの雑多具合に思わず二人揃って笑いが込み上げてしまった。

「いっぱい買い過ぎたねー。ここまで買い物したの、初めてだ。」

ケラケラと笑いながら言う康介の台詞に、振り回されてんのは俺だけなんだろうなと思う。
最初の男が俺なら、最後の男も俺が良い。
どうやったらなれるのか。
執着されたことはあったものの、執着したことなんて今までなかったからこの感情のやり場をどうすりゃ良いのかが分からない。

「楽しかったか?」
「うん!また行こうね、耀司くん!」

【また】、ねぇ………
それが来るか来ないかは、お前次第なんだけどなという皮肉は俺にしかダメージがいかないから飲み込んでおく。
ただ口を開いてしまえば溢れてしまうだろうから、代わりに康介の額に唇を寄せることで誤魔化した。

「………へへっ、耀司くんキス好きだね。」
「好きだよ。」

お前が。
照れ臭そうに額を押さえながら笑う康介に、そう素直に言ってしまえたらどれ程楽か。
何一つ思い通りにならない。
康介も、自分自身の感情も。
だというのに何故だろうか、思ったよりもしんどくない気がする。
いや、しんどいのはしんどいんだが、でもそれでもそのしんどさを乗り越えないと先に進めないんだと思うから。

「僕も、好き。」

へにゃりと笑う。
多分、キスが好きだという意味なんだろう。
もしかしたら照れが上回っている………
か若しくは元彼に何か言われたかしたから戸惑ってるだけで、コイツ自身は根本スキンシップが好きなのかもしれない。

ものは試しとばかりに康介の手をそっと握り、柔らかな力加減のまま俺の方へ引き寄せて掌に唇を当てるだけのキスをしてみる。
嫌なら振り解くだろし、そうじゃないなら受け入れる筈だ。
そう思いながらキスをしたままの状態でジッと康介の目を見つめてみる。
さっと顔を朱に染め俯く康介は、一体どういう反応をするのか。

「………そこ、だけ?」
「おまっ………」

惚れただのなんだの言ってる男の前で、顔を赤くしたまま涙目の上目遣いでそんなことを言うもんじゃない!
俺じゃなかったら無理矢理ぐっちゃぐちゃに犯してるぞクソが!
俺も俺で普通の恋人だったらぐちゃぐちゃに犯してるけどな!!

「デコとか手だけじゃなくて、口がいい。」
「………わざとかお前。」

誘ってんのか?
犯され待ちか?
そう思うが心底分かってない感じで首を傾げているから、マジで分かってないんだろうな。
思ったこと言っただけかよクソ。
あー!マジで可愛い。

「ただするだけが良い?それとも抱っこしながらしてやろうか?」
「ん。だっこ。」

笑え………笑えよ………
からかうつもりで言った自分の言葉であっさり首を絞めてしまった俺を笑えよ!
クソ!
こんなに可愛い反応するとか思う訳ないだろ!!
いちいち俺のツボを刺激するな!

「ほら、おいで。」

腕を伸ばして呼んでやれば、嬉しそうに飛び込んでくる。
マジで可愛い。
コイツこんなベッタベタな行動が好きなのかよ。
お前がするなら俺も好きだよ、クソが。

グッと抱き寄せながらキスをしてやる………ふりをしてちょっとぺちゃんこな鼻に軽く歯を立てて噛み付く。
ちょっと不満げな顔をしたがそれも一瞬で、ぺったりと俺の胸板に身を寄せて嬉しそうに笑うから多分これも正解だったんだろう。

「キスして。」
「良いぞ。」

お前の望むこと、望むままに全部。
望まないことは絶対にしないから、だから。
だからどうか、俺を選んでくれ。
お前を愛しているかも、仮に愛していたとして大事にしてくれるかも分からない【好きな人】を選ばないで欲しい。

「映画観る?」
「ん、観るけど、もっと」

強請られるままに舌を絡ませ、抱きしめる腕に力を込める。
離れれば追いかけられ、追いかければ離れていく。
そんなじゃれあいのようなキスを何度も何度も繰り返し、
結局アレだけ買ったDVDを何一つ再生させることなく床に散らかしたままで、俺達はベッドへと縺れ込んだ。



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